その土地について知り、「サステナブルな旅」を考える
訪問前の事前学習
いわき市へのフィールドワークへ出発する前に、まず生徒たちは事前学習を行い、本取り組みへの理解を深めました。
まず、GREEN JOURNEYの「環境にやさしく、地域はうれしく、自分たちはとことん楽しい旅」というコンセプトと5つのポイントを学びました。
その上で、訪問地域である福島県について、また当日訪問する各施設についても知見を深める学習をしました。
生徒同士での意見交換を通じてより知見を深め、その土地ならではの「サステナブルな旅」のイメージを膨らませていきました。
現地を訪問し、体験する
いわき市への移動
東京駅からいわき駅までは「特急ひたち」を利用しての移動。
鉄道の二酸化炭素(CO₂)排出量は、国土交通省のデータによれば高速バスの約4分の1程度と言われています。
地球環境に優しい交通手段を選ぶことから「サステナブルな旅」は始まります。
太陽光によるトマト栽培
生徒が最初に向かったのは太陽光でトマトを栽培するワンダーファームです。
いわき市の日照時間は年間約2100時間と、県内1位、全国的に見ても上位となっています。ワンダーファームでは、この特徴を活かし、太陽光でトマトを栽培しているため、1年中トマト狩りを体験することができます。
こうした太陽光利用型植物工場では、最新の技術を活用し、温度・湿度や養液の量・二酸化炭素濃度が正確に均一管理されています。ワンダーファームでは収穫・加工・販売の全てを行っており、6次産業化にも成功しています。
暑さで腐ってしまったトマトも肥料として再利用したり、形が悪いトマトは加工するなど、おいしいトマトを無駄にすることなく、最大限活用する取り組みも行っています。園内で販売されているトマトジュースを生徒たちも飲み、甘さが際立っていました。
また、震災後の復興と風評払拭への取り組みについて、現地の皆様の声を通じて、農業が地域社会と深く結びつける営みであることを実感しました。
地域の再発展を支える綿花栽培
続いて訪問したのは、株式会社「起点」。日本でも類を見ない、有機栽培された在来種の綿花を生産・加工している会社です。
東日本大震災での風評被害をきっかけに、福島の農業を支える新たな作物として綿花栽培を始めました。現在日本の綿の輸入率は約99%となっており、高価な国産綿花を使った衣服や手ぬぐい、タオル等を販売しています。また、「起点」では生産者と消費者間の綿に対する理解の乖離を埋めるために、種まきや収穫体験などの活動をしています。
今回、生徒たちは綿繰機という綿花から種を取る道具の体験をさせていただきました。他にも糸の撚り方やそれぞれの綿花の特徴を教わるなど、貴重な経験となりました。
被災により環境に大きなダメージを負った経験があるからこそ、地域資源や自然との共存を大切にしている「起点」。
皆さんのお話を通して、生徒たちは地域の再発展には資源と人とものを循環させる必要があることに気づかされました。
持続可能な社会を目指すバイオマス発電所
2日目に訪問したのは、福島いわきバイオマス発電所。海外から輸入した木質ペレットを有効活用し、クリーンエネルギーを発電・供給する福島のバイオマス発電所として知られています。この施設では、年間約7.7億kWh(一般家庭約25万世帯の年間電気使用量)を発電し、その過程で約33.3万tのCO₂排出を削減しています。
今回の訪問では工場の最上部にある設備や、発電の場面を間近で見学させていただきました。さまざまなお話を聞く中で、木材は成長過程で二酸化炭素を吸収するため、燃やしても大気中の二酸化炭素の量を増やさないカーボンニュートラルであることを教えていただき、環境への負担が少ない点が印象的でした。
普段何気なく使っている電気の作り方も学ぶ経験は、持続可能な社会を目指すためのエネルギーの在り方について考えるきっかけとなりました。
宿泊
今回の宿泊場所は「スパリゾートハワイアンズ」。
リゾート施設という印象が強いですが、もともとは炭鉱会社・常磐炭礦だった場所を地域再生のために作り替えたという歴史から、地球環境と企業活動の「調和と共存」をテーマに、環境に配慮した様々な取り組みを実施している施設でもあります。
たとえば、食事面では廃プラスチック削減への取り組みの1つとして、もみ殻をバイオマス原料としたトレーの使用を開始しています。
また、駐車場に太陽光発電システムが導入され、屋根としても機能する工夫を知り、環境への配慮にも感心しました。
実際に施設を知ることで、訪問前とは印象が大きく変わり、ハワイアンズの歴史や奥深さを実感し、娯楽だけでなく人々に希望を与える存在であることを感じ、地域と共に歩む姿勢に強い感銘を受けました。
旅の行程
今回、生徒たちはこのような行程で校外学習に行きました。ご紹介した訪問先以外にも、「アクアマリンふくしま」や地元の食材をいただけるお食事処にも足を運び、いわき市の魅力に多く触れることができました。
1泊2日の中で、生徒たちはGREEN JOURNEYが掲げる5つのポイントを意識し、サステナブルな旅のカタチを実現しました。
旅を振り返る
訪問後の事後学習
1泊2日の体験を通して生徒たちは福島の地域の人々や文化に触れ、多くのことを学びました。一部の感想をご紹介します。
いわきの方々のお話を通して、東日本大震災の影響の大きさを改めて実感したと同時に、悲しい面だけでなく、震災の経験からより一層団結されていることを知りました。また、普段ではできないような経験をさせていただき、様々な視点から社会や環境について考えるきっかけとなりました。
今回のグリーンジャーニーでは、それぞれの土地が持つ強みを最大限に活かすための、そこに住む人々の並々ならぬ努力と強い意志に深く感動しました。また、お世話になった株式会社起点の取り組みも心に残りました。2011年3月11日に発生した福島第一原発の事故による風評被害から福島を復興させようという強い想いから、「食料が作れないなら、非食料作物を作ろう」と綿花の栽培を始めたと伺いました。自社で栽培するだけでなく、他の農家さんが作った綿花も買い取ることで、地域の雇用創出にも貢献しています。逆境を逆手に取った発想と、地域全体で支え合うその姿勢に感銘を受けました。この旅を通して、その土地ならではの資源や状況を活かし、前向きに進んでいく人々の力強さを肌で感じることができました。
関係者のコメント
今回の探究型フィールドワークに、携わった方々からもそれぞれの視点でコメントをいただいています。
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- エイブルエナジー合同会社福島いわきバイオマス発電所
顧問 町野 孝司 様
福島いわきバイオマス発電所は、木質ペレットを燃料として燃やし、その熱で蒸気タービンを回して発電しており、木質燃料バイオマス発電所としては、国内最大級規模であり、脱炭素化への貢献と安定供給の責務を果たしています。中央操作室に案内した際、生徒さんの目の輝きが一段と変わりました。「夢と希望と誇りを持って」運転している弊社の取り組みを感じ取っていただけたものと思っております。
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- 株式会社 起点
代表取締役 酒井 悠太 様
実際にコットンに触れながら、暮らしの中にある資源の循環について学ぶ時間を過ごしました。自身の買い物の体験や、糸を紡ぐ作業などを通して、具体的なイメージを手繰り寄せる様子は、私たちが目指す共創の瞬間だったと感じています。これからの文化を生み出すのは、自分たちの世代であるという誇りを持ち、明るい未来を描いていってくれたらと思います。
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- 常磐興産株式会社 観光部門 営業部 営業推進担当
マネージャー 村田知博 様
講演では、炭鉱から観光産業への転身や東日本大震災からの復興への取組み、そして再生可能エネルギーや廃プラスチック削減への取組みを紹介しましたが、生徒の皆さんの真剣な表情やメモを取る姿に関心の高さを感じました。これからも旅や食を楽しむために皆さんが自分事と捉え再生エネルギーや環境を考える機会になったのであれば大変嬉しく思います。
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- 関東学院中学高等学校
教諭 新堀 雄介 様
「GREEN JOURNEY for SCHOOL いわき」は、生徒にとって貴重な体験となりました。震災からの復興や再生可能エネルギーを学ぶ中で、多くの生徒が真剣な表情で話を聞く姿が印象的でした。未来のエネルギーについて考える良い機会となり、生徒たちの学習意欲も高まったようです。今回の学びが、今後の探究活動へつながることを期待しています。
今後に向けて
今回は、東日本大震災からの復興に取り組む福島県いわき市に訪問しました。いわき市の皆さんの地域の資産を活かしながら、持続可能な未来を作っていこうという取り組みを受けて、学生たちも大きな気づきが得られました。GREEN JOURNEY for SCHOOLは今後も、将来に向けて解決していくべき社会や地域の課題を、次世代の若者たちと体験を通して学ぶ機会をつくっていきます。
この1泊2日の経験は、僕にとって新しい視野を開く扉となりました。様々な施設に行き、当事者の声を聞くことで環境問題を自分の未来と切り離せない問いとして意識するようになり、物事を多角的な視点で捉えることができるようになりました。
いわき市で学んだことを心に留め、環境に配慮しながら今後生活していきたいです。