長崎 五島

五島のリアルに触れ、地域の持続可能性を考える旅

  • 協力企業・団体及び訪問地
    五島市役所、鬼岳天文台、そらいいな株式会社、奈留高校、九州商船株式会社、オリエンタルエアブリッジ株式会社、うた丸、ばらもん凧継承者
  • 学校名
    駒場東邦高等学校(東京都世田谷区)
  • 実施日程
    2025年7月21日(月)~7月23日(水)

生徒たちが日本全国様々な地域に訪れて、その土地ならではのくらしや文化、歴史に触れ、「サステナブルな旅」について考えるGREEN JOURNEY for SCHOOL。今回は、美しい海に囲まれた長崎県五島市。独自の歴史と文化が息づくこの島々は、離島ならではの人口減少という大きな課題に直面しています。生徒たちは、この地で「持続可能な島の未来」について考えました。

生徒自ら「サステナブルな旅」を考える

訪問前の事前学習​

今回のGREEN JOURNEY for SCHOOL 五島ではGREEN JOURNEY のコンセプトである、「地域がうれしく」という視点に特に着目しました。この理念を実践するため、旅で探究すべき地域課題について話し合い、「離島が抱える問題」をテーマに設定。まず、五島市が直面する課題について「人口減少」「一極集中」「交通インフラ」「観光産業」の4つの観点から独自の調査を行い、仮説を立てました。その仮説を基に五島市役所の方々と意見交換会を実施。自治体としての考えをはじめ、地域住民の方々や地元企業の具体的な取り組みについて、貴重なお話を伺うことができました。
五島市の方との対話を経て、生徒たちは現地で実際に見聞きしたいことを改めて整理。これにより、当初の仮説がより具体性を増し、「GREEN JOURNEY」が掲げる5つのポイントと生徒たちの探究活動との繋がりも明確になったところで、現地に向かいました。

現地を訪問し、体験する

五島市への移動
交通機関の環境への取り組みを学ぶ

ついに、探究型フィールドワーク当日。

往路は羽田空港から長崎空港を経由し、五島福江空港まで航空機で移動。復路は、生徒たちの強い希望により福江港から長崎港までジェットフォイルを利用し、海上交通ならではの視点を得ました。その後、長崎空港から羽田空港へ移動。また、島内での移動の一部には電気自動車(EV)も活用しました。
このように複数の交通手段を意図的に組み合わせることで、各交通事業者の環境への取り組みや運営上の課題を具体的に知ることができました。

奈留島の人々との交流

生徒たちは2泊3日の中で、様々な体験をしました。
その中でも特に生徒たちの印象に残った体験についてご紹介します。

2日目には、五島が抱える人口減少の課題をより体感できる、二次離島の奈留島を訪れました。
そこで、街づくり協議会の皆さんと現地の高校生との交流を行いました。

街づくり協議会の皆様からのお話は、離島が抱える問題と厳しい現状を目の当たりにし、現状を維持していくことの難しさと大切さを実感。より深く人口減少について考えさせられる時間となりました。

また、離島留学制度を行っている奈留高校での交流においては、互いの取組を共有し意見交換をしました。奈留島で暮らす高校生から見た島の魅力や、地元出身者のOne九州という帰属意識の強さを知り、新しい発見と気づきがありました。

現地での体験を通して、生徒たちは地域で暮らす人々のリアルな声を知り、地域が抱える課題をより近いものとして捉えることができ、地方に実際に何が求められているのかを改めて考えさせられる貴重な経験となりました。

島の恵みと知恵を学ぶ体験

奈留島を訪れた後は、鬼岳に古くから伝わる「ばらもん凧」作りも体験。作り手の方々の想いに触れると共に、このユニークな文化を未来へ継承していくことの意義と難しさを学びました。
また、その夜には島の象徴である鬼岳で、まず星空観察を実施しました。市街地の光が届かず、視界を遮るものもない山頂で見た満天の星は、都会では決して味わえないもので、生徒たちはその美しさに深く感動していました。

また3日目は、漁業関係者を悩ませる「ガンガゼ(ウニの一種)」の駆除から加工、試食までの一連の流れを体験しました。ガンガゼは、海藻を食べ尽くし生態系を破壊する「厄介者」とされています。しかし、このガンガゼを食用として活用する取り組みは、新たな雇用を創出し、地域経済に貢献する可能性を秘めています。 この活動を通して、視点を変えることでマイナスをプラスに転換し、環境保全と経済活動を両立させるサステナブルな仕組みを実地で学ぶことができました。

企業の地域活動学習
日産自動車株式会社とオリエンタルエアブリッジ株式会社による講義

離島である五島は、人や物の移動を航空機と船舶に依存しており、CO₂排出量の多さという構造的な課題を抱えています。しかし、その制約があるからこそ、島内では官民が連携し、脱炭素社会の実現に向けた先進的な取り組みが積極的に推進されています。
今回の旅では、日産自動車株式会社とオリエンタルエアブリッジ株式会社(ORC)から、両社が連携して進める環境配慮の取り組みについてお話を伺いました。日産が推進する「ブルー・スイッチ」活動を通じた電気自動車(EV)の活用と、ORCが導入するバイオ燃料の活用。そして両社が連携して空港利用者のEV利用を促すなど、長期的な視点で環境負荷の低減を目指していることを学びました。
また、物流面では、そらいいな株式会社を訪問。ドローンを活用して島内で物資を輸送する現場を見学しました。五島ならではの課題をドローンを利用した独自の方法で解決し、持続可能な物流を実現させる取組みを学ぶことができました。

宿泊

今回の旅では、コンセプトが対照的な2つの宿に宿泊し、五島の多様な魅力と地域との関わり方を学びました。

〈ホテル カラリト五島列島:地域の未来を創造する滞在拠点〉
一泊目は、美しい海を望むリゾートホテル「カラリト五島列島」です。 このホテルは、単なる宿泊施設ではなく、「関係人口の拡大」や「雇用促進」といった地域課題の解決を目指す社会的な拠点としての役割を担っています。滞在者が五島の文化や自然を深く体験できるコンテンツや、島の文化や歴史、風土を皿の上で表現する「ローカルガストロノミー」を提供しており、観光を起点とした持続可能な地域づくりの先進的なモデルを学びました。

〈民宿 坂の上:島の暮らしと恵みを体感する家庭の味〉
二泊目は、温かい家族経営が魅力の「民宿 坂の上」です。ここでは、島の豊かな海と大地で採れたばかりの食材をふんだんに使った、心のこもった手料理をいただきました。食事を通して、五島の自然の恵みそのものを味わうと共に、島に根付く暮らしの温かさや豊かさを肌で感じることができました。

旅の行程

今回、生徒たちはこのような行程で探究型フィールドワークに行きました。二泊三日の中で、GREEN JOURNEYが掲げる5つのポイントをすべて体験し、サステナブルな旅のカタチを体験してきました。

行程には記載ないものの、他にも地元の食事処や伝統文化体験を実践しました。

旅を振り返る

訪問後の事後学習

3日間を通して参加した生徒たちは多くのことを学んだようです。こちらの記事では、生徒のレポートより3つのコメントを紹介します。

今回五島列島に行き、離島の抱える様々な課題について考えることができました。特に交通や人口減少に関する課題が本土よりも深刻に進んでおり、課題をこれ以上悪化させない方法を考えなければならないと感じました。美しい自然が残る素晴らしい場所なので、是非また訪れたいと思いました。

実際に現地に訪れることで多くの気づきがありました。五島は、人口減少問題が深刻である一方、豊かな自然や興味深い伝統文化があ り、さらにドローンや電気自動車などの最新技術を積極的に活用していました。これからも五島を含む様々な地域の課題に関心を持っていきたいです。

自然産業、人口などから多面的に五島を捉え、公になっていない魅力や課題を発見しました。また、現地の方々との対話は井の中の蛙の私にとって有意義な旅行と学びとなりました。この経験を是非自分と地球の未来に活かしていきたい。

関係者のコメント

今回の探究型フィールドワークにおいても、企画・実施に携わった関係者から、新たな発見や学び、今後に対する期待の声をいただいております。

五島市文化観光課
熊埜御堂翔大 様

五島の歴史や文化を学び、抱える課題に触れるとともに、観光振興に向けた興味深い提案を聞かせてもらいました。ガンガゼウニの活用では実際に海に潜ってみるなど、五島らしい体験を楽しんでいる様子でした。都市部では見えにくい島特有の課題について、東京の学生が学んでくれたことは貴重な経験になったと感じています。

五島市 奈留支所
岩田晃一 様

教育旅行の受入において、地域課題解決に向けた学校間の交流はありませんでした。
島に一つしかない生徒数も少ない奈留高校、都会の中の大人数の駒場東邦高校。
違う立場での意見交換が、多角的な視点を生み、短い時間の中に、様々な可能性を感じました。
このような取り組みが益々広がっていくことを期待しています。

カラリト五島列島
有山真人 様

今回の旅では、五島列島が抱える人口減少や環境問題をお伝えし、カラリト五島列島の取組みもご紹介しました。また、我々が大切にしているローカルガストロノミーも実際に食していただきました。皆さんの積極的に質問する姿勢や意識の高さに感動し、この経験をきっかけに共に地域未来を考えていける事を楽しみにしています。

五島バラモン継承者
平山絵美 様

五島列島の伝統工芸品"バラモン凧"を通して、若い世代の方と交流が持てたことをとても嬉しく思います。バラモン凧の骨組み体験で、予想以上に盛り上がったことで、私自身もこれからの活動にヒントを得ました。今、バラモン継承者は60・70・80代がメインですが、先輩方からしっかり学んで受け継ぎ、次の世代の後継者を育てていきたいと思います。

長崎県立奈留高等学校
教頭 本多敏高 様

離島留学についての説明後、生徒同士で交流しました。「猫と人が共存できる島の研究」の生徒と、「将来は街づくりに関わりたい」生徒が意気投合していましたし、都会と離島の違いに驚く場面もありました。駒場東邦高校の生徒だけでなく、離島で同世代と関わる機会が少ない本校生徒にとっても実りある活動になりました。

駒場東邦高等学校
教諭 続木敏之 様

今回のGREEN JOURNEYの取り組みを通じ、真剣に地域課題に向き合うことの大変さとフィールドワークをする大切さに生徒たちは気が付いたと感じています。実際に五島列島を訪れたことで行く前には教室では気づけなかった五島列島の地域資源を多く発見でき、生徒たちはその土地の素晴らしさに魅了されていました。一方、抱える地域課題についてはそれぞれで視点が異なり、解決策を一本化する難しさにも直面していました。
このように1つの旅を通じて得られた様々な経験の中楽しさと難しさを感じられるいい機会となりました。

今後に向けて

今回は、人口減少に直面しながらも、豊かな自然と独自の文化を未来へつなごうと挑戦を続ける長崎県五島市に訪問しました。島の皆さんが、そこにある資産を希望に変えていく取り組みに触れ、学生たちも大きな気づきを得ることができました。
GREEN JOURNEY for SCHOOLは今後も、将来に向けて解決していくべき社会や地域の課題を、次世代の若者たちと体験を通して学ぶ機会をつくっていきます。

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